第5回
対人関係からみた「そのまま」の自分 (1/4)
さまざまな対人関係
発達障害の私たちも、対人関係の中で他者とさまざまな気持ちや思いを共有すると嬉しかったり、一体感を感じたりします。人と趣味を共有したり、生活を共にしたり、どこかに行ったりする営みは本来とても楽しいものです。新しい刺激が得られ、一人で居る時とは違って、自分を表現して相互交流することで楽しみに満ちた時間を過ごすことができます。
そんな対人関係ですが、私たちはなかなかうまくいかないのが現実かもしれません。対人関係でうまくいかない場合も色々なパターンがあると思います。ここでは「職場での関係で誤解が生じる場合」と「友人や恋人間で誤解が生じる場合」「困った時の対処法」の例をピックアップしてみたいと思います。
「職場での関係で誤解が生じる場合」
職場で、なぜ、理解してもらえなかったり、トラブルになるのでしょうか。その答えの1つに私たちは、一般の人の言う”曖昧さ”や”適当さ”が分からなかったりする点があります。
例えば、職場で「適当にやってくれればいい」と言われて、実際に適当にすると、多くの場合、怒られます。「適当に」「手を抜いて」「簡単に」…などなど言われると、一般の場合、10のうち6〜8割の完成度を保つことを言っているようですが、私たちは、「10のうち1〜2割の完成度もいるか、いらないかだ」と受け取ることが多いようなのです。だから、私たちが行う適当では、周囲の人からひんしゅくを買ってしまうのです。
また、相手の人が求めている「加減」が分からないので、「これを調べておいてくれ」と言われると、どの分量でどの点を調べたらいいのかとても悩んでしまいます。そのため、メモ程度の量を期待されていても、辞典並の分量まで多岐にわたって調べようとしてしまうこともあります。そして、その割りには、「簡単に」などと言われると、提出する量を一行で済ませてしまったりします。そうなると、今度もまた怒られてしまいます。
それに、「そのうちでいいよ」とか言われると、私たちの脳内では「やらなくてもいい」とか「思い出した頃にする」とかに変換されていることもあるようです。その考えでいると、これもまた怒られてしまいます。 そのため、一般の人が頼み事をしてくるたびに、いつもシャーロックホームズ並の推理力が必要になり、多岐にわたり熟考し、取り掛かるのに時間がかかってしまいます。