第7回 彼らの生活について(2/3)

40代後半のDさんとEさん姉妹は、最近までお母様と同居をされていましたが、お母様が大病を患い初めてグループホームに入ったばかり。 Dさんは比較的スムーズに新しい生活に移行しましたが、お姉さんのEさんはケアプロバイダーと合わなかったり、慣れるまで時間がかかってしまったようです。 同じ環境でも相性というのがあるようです。

今まで無償の愛情を持って面倒を見てくれていた親がいなくなるのは、大変ショックな事だと思います。 私達よりまだまだ精神的に幼い彼らにとっては、どんなにか不安で辛い事でしょう。 Aさんは今でもお母さんを思い出すと泣く事がよくあります。

グループホームのケアプロバイダーがいい人ならいいけれど、そうとも限りません。 毎日一緒に過ごすので、服装や持参するランチから、彼らがどんな世話を受けているかは大体分かります。 アトリエでは、よくケアプロバイダーへの愚痴や、グループホームの生活についていろいろ見聞きします。

「ルームメイトがうるさくて眠れない」とか「ケアプロバイダーがいや」とか。 「プライバシーが少ないので一人暮らしがしたい」と言う人も多いです。 中にはグループホームが合わなくて引っ越しを繰り返す人もよくいます。

最初はこういった事を聞く度に憤りを感じで、どうにかならないかと思っていました。 しかし毎日愚痴を聞かされていると、だんだんこちらも麻痺してきます。 長年、関わっていると、つい全て分かった気になって「ああまた愚痴か」とか「彼女は大げさに言い過ぎる癖がある」と聞き流してしまういがち。 これは支援者にとっては危険な罠だと思います。

何度か事実を確認して、それが事実無根だと分かった事もありました。 しかし、多少でも改善に繋がる事もありました。 彼らの言葉がたとえ、FASLE ALARMだったとしても、支援者の判断でリポートを怠ったりする事はあってはならないと思います。 言葉の隅々に、虐待のヒントが隠される事があるからです。 家族のいない彼らの言う事を、家族だったら如何して欲しいか?という立場で支援者は親身に聞かなくてはいけないと思います。 これは自省を込めて書いています。

残念ながら世の中には、言葉でうまく訴えられない障害者への虐待というのは確実に存在しています。 だから彼らのサインを見逃さず、代弁をするのはすべての支援者の仕事だと思っています。

※私の知っているケアプロバイダーさん達は、本当に彼らを実の家族のように思っている方達です!

プロフィール

佐藤エリコ

カリフォルニアの首都、サクラメント在住の15歳のアスペ君の母。
東京造形大絵画科、サンフランシスコ州立大卒。
1999年渡米し、画家、イラストレーター、美術教師として活動する。
2007年、一人息子Mのアスペルガー診断をきっかけに自閉症の療育を学ぶため、ABA(応用行動分析)のホームセラピストに。
2010年、アスペルガー育児とセラピスト体験をコミックエッセイ「まさか!うちの子アスペルガー?」(合同出版)から出版。
現在はアートとセラピストの経験を活かして、2010に発達障害(知的障害、脳性マヒ、てんかん、自閉症を含む)をもつ成人のアートスタジオ「スタジオ23(仮名)」にインストラクターとして勤務している。
18歳から90歳以上までの強烈な個性のアーチスト達が50人以上も通うアトリエで、息子の将来について考えながら、日々格闘中!

ブログ・絵カードのお店

著書


まさか!
うちの子アスペルガー?
佐藤エリコ/著
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