第10回 彼らの老後と心の支え(1/2)

みなさん、お元気ですか?
アトリエでは、年に一度のアートショウに向けて、仕上げのラストスパートに気合いがかかっております。

私がこの仕事に就いて、今年で4年目になります。
以前は自閉症を持つ児童の支援の仕事をしていました。
アトリエがその時と大きく違うのは「アートをしたい発達障害もしくは知的障害をもつ18歳以上の人」であれば年齢制限がなく、亡くなるまで通い続ける人もいることです。

20代、30代前半の若い人は、アトリエで制作を経験した後、就労プログラムなどに移行して行く場合もあります。
また、就労支援プログラムに何年か通った後、30代後半から60代くらいでアトリエにたどり着く人もいます。

ちなみに私のクラスにいるのは50代前後の方が圧倒的多数です。

彼らが若い頃には、まだまだこういった支援プログラムがなく、知的障害を持つ子を授かった親は、施設に送るか、自分や兄弟が一生面倒を見るかを選択していたようです。当時の施設は、外出やレクリエ-ーションの機会などは殆どありませんでした。

親御さんと生活している人は、親御さんが元気なうちは外に出掛けて社会との接点を持つ事もできますが、年齢が上がるとそれも難しくなります。その点、現在はグループホームなどがあり、そこから通えるアトリエのようなプログラムがあります。

健常者の多くは、年をとり、結婚し、新たな家族を形成し、親をとの別れを経験します。
しかし知的障害を持つ彼らで結婚して家族を持つ人はまだごく少数です。
だからアトリエの仲間は、彼らにとっては、活動の仲間であるとともに、家族代わりのようなものなのです。

例えば50代(?)のキャシーさんは、お母さんを亡くした時、新聞に掲載されたその記事を皆に見せて、ハグして悲しみを共有してました。

60代のメリーさんは、グループホームに長年暮らしておりました。
昨年お父さんを亡くした時はショックを受けていましたが、今でも同じように元気にグループホームからアトリエに通ってきます。

ジェニーちゃんは、40歳まで同居をしていたお母さんを亡くし、すでに7、8年経ちますが、時々思い出して涙がとまらなくなります。

プロフィール

佐藤エリコ

カリフォルニアの首都、サクラメント在住の15歳のアスペ君の母。
東京造形大絵画科、サンフランシスコ州立大卒。
1999年渡米し、画家、イラストレーター、美術教師として活動する。
2007年、一人息子Mのアスペルガー診断をきっかけに自閉症の療育を学ぶため、ABA(応用行動分析)のホームセラピストに。
2010年、アスペルガー育児とセラピスト体験をコミックエッセイ「まさか!うちの子アスペルガー?」(合同出版)から出版。
現在はアートとセラピストの経験を活かして、2010に発達障害(知的障害、脳性マヒ、てんかん、自閉症を含む)をもつ成人のアートスタジオ「スタジオ23(仮名)」にインストラクターとして勤務している。
18歳から90歳以上までの強烈な個性のアーチスト達が50人以上も通うアトリエで、息子の将来について考えながら、日々格闘中!

ブログ・絵カードのお店

著書


まさか!
うちの子アスペルガー?
佐藤エリコ/著
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