ITパラリンピック2013 [前編] (3/4)

HALスイッチへの期待

これまでのHALの研究結果から,筋肉に動きがなくても生体電位信号が出ていることはわかっていました。さらには,物理的な動作が行えなくなった病気の進行したALS患者からも生体電位信号が検出できることも確認できました。にわかに“究極のスイッチ”や“スイッチの最終兵器”の登場かと期待が高まったのです。なぜなら,ALS患者等の神経性難病の場合,病状が進むと本人の意思による物理的動作が不可能になり,意思の表出が極めて困難になるからです。最終的には,まぶたを動かすこともできなくなり,TLS(閉じ込め症候群:Total Locked in State)に陥ってしまうとされ,患者当事者のみならず家族も恐れているのが現状です。これまで,物理的な動きを必要としない脳波を使った意思伝達装置もありましたが,未だ実用にならない状況があります。

もし,HALによるスイッチが実現すれば,これまでのスイッチ入力方法が使えることになります。それは,あらゆるコンピュータ操作を可能とし,一文字一文字ではありますが言葉を紡ぐことを可能にします。つまりは,何も意思伝達ができない世界から,自由に言語で表現できる世界が開かれるのです。特に,閉じ込め症候群(Total Locked in State)からの解放が期待されました。その期待は以下の川口さんの以下の動画でのお話しに集約されます。

ALS協会の川口有美子さんによるHALスイッチのコメント
(*ITパラリンピックの動画ではありません)

『私の母はトータルロックトインステート(Total Locked in State)という状況になって、まあTLSですよね。眼球運動も全部無くなって、意志の伝達方法をすべて失った時に、私は母を殺そうと思って、そういうことがあったのが2000年でした。こんな機械が早く発明されればいいなとずっとずっと思っていました。 この瞬間、一年前?今年2月ですよね。ちょうどこの場所で岡部さんが(HALのスイッ-チ操作が)出来た時に、良かったぁと思って。でも、まだあの時は発表しちゃいけないということで。今日はテレビカメラも入り報道も入り、みなさんと分かち合えるということは、この瞬間-私たちはTLSを追い越したということですよね。 だから、意思伝達ができないとか、指が動かないとか、まぶたが動かないということで死ぬなんてことは考えないでいいということなんです。山海先生、中島先生ありがとうございました。』
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