第6回 福祉情報技術とストラテジー(3/3)


写真4:港に浮かぶ航空母艦ミッドウェイ

周知の通り,発達障害者は目立った身体障害はなく,見た目で分かりにくい障害です。足が無ければひと目で障害者だと分かりますし,車いすや義足が必要であることは簡単に想像できます。その点,発達障害者に使わせる福祉機器などは簡単にはわからないのです。反射的に対策が判明する身体障害者への対策と対照的なのが発達障害者への対策と言えるでしょう。発達障害者への技術的な支援は,即物的に与えればその場で解決するものではありません。発達障害が引き起こす困難に対しては,問題の全体を俯瞰した柔軟かつ合理的な構造を持った支援策と戦略が必要なのです。さらにその経験を共有し,横断的に対策を拡充していくのが大切です。とかく大学などでは,個別に何かシステムや機器を買えば問題が解決すると考えがちです。それを裏付けるように,多くの大学には無用の長物がいたるところに廃墟のように佇んでいます。使うための構造と戦略を持たなかったためです。それでは,いくらお金をかけても問題は解決しません。近年,文部科学省から身体障害学生をはじめ発達障害学生への対応についても具体的な対策が周知されるようになってきました。ただし,一方通行の情報に頼るだけでは戦略的に動くことはできません。意識的に横の繋がりを密にした連携が必要です。

CSUNで体験した福祉技術を戦略的に活用するスタンスは大きな刺激になりました。まだ,CSUNに行かれたことの無い方,ぜひ来年は一緒に行きましょう!

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プロフィール

伊藤史人
 (いとうふみひと)

一橋大学教員。
電子情報通信学会発達障害支援研究会(ADD)幹事。
専門分野は、ICT(情報通信技術)を利用した障害者のコミュニケーション支援です。
しばらくは医用画像システムを専門としていたことから、その要素技術であるネットワークや画像処理をメインウェポンにして日々格闘中。
現在、勤務大学ではアスペルガー症候群の障害学生の修学支援として、ネットワークを使った遠隔講義を実施中です。
今後は、障害学生の認知数は増加すると見込まれるため、ICTを使った効果的な支援を模索中です。
コラムでは、ICTを使った発達障害の支援方法を中心に、その他の障害についても触れていく予定です。
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