第4回 桜前線と支援機器(2/2)

そして,1990年代半ばから,爆発的に普及しだしたパソコンとインターネットが融合することで,これまでにない変化が現れ出しました。これまで単独で機能していた支援機器がつながりだしたのです。支援機器がつながるということは,そのまま人同士がつながりだしたということ。有史以来,数千年の時を超えて,本来はつながることが困難だった人同士でコミュニケーションが取れるようになっていったのです。

例えば,視覚障害(Aさん・全盲)と聴覚障害者(Bさん・全聾)がコミュニケーションを取ろうとした場合を考えます。Aさんは,全盲で文字も相手の表情も読み取れません。文字を書こうにも読み取れる形で書字することができません。ただし,話すことはできます。Bさんは,全聾で話し声を聞くことができません。話そうにもきちんと相手が聞き取れるように発話することができません。ただし,文字を読み取ることはできます。つまり,手紙はおろか電話やFAXでもコミュニケーションをとることができないのです。でも,今では何の問題もなくお互いコミュニケーションが取れるようになっています。どんな方法を使えば可能になるでしょうか?次回をお楽しみに。

今,私はまるで桜前線のように北上中です。福島に入ったあたりから景色が真っ白になってきました。いかにも寒そうです。岩手にいたっては,新幹線で二時間半の距離でも桜の開花は東京の一か月後です。実は,それは「ICT活用前線」もある意味同じなのです。一部のホットスポットを除けば,せっかくの便利な活用方法も都市部で真っ先に花咲き,地方にはなかなか広まっていきません。少しの機器と簡単な方法で,コミュニケーション環境が一気に開花するはずなのに。支援者不足の問題・賃金格差・情報格差(デジタルデバイド)が要因となって,地方には肝心のICT活用前線がなかなかやってこないのです。そのなことを思いながら,目的地の盛岡へ向かっています。

寒いだろうなぁ。

お知らせ


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3月24日(日)に東京神田の一橋講堂にて「ITパラリンピック2013」を開催します。
難病患者のコミュニケーションを支援するNPO法人ICT救助隊が実施するもので、私は「太鼓の達人」を担当します。iPad とワンスイッチを使って太鼓の達人で遊びます。呼吸器を付けていても、寝たきりの人でも楽しめるゲームとなっています。
メインイベントは、サイバーダイン社のHALを使ったスイッチの実演!体がまったく動かなくてもスイッチ操作が可能になる夢のインターフェース!これはぜひ生で見て欲しい企画です。 参加費無料ですので、ポスターを見て関心のある方はぜひいらしてください。

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プロフィール

伊藤史人
 (いとうふみひと)

一橋大学教員。
電子情報通信学会発達障害支援研究会(ADD)幹事。
専門分野は、ICT(情報通信技術)を利用した障害者のコミュニケーション支援です。
しばらくは医用画像システムを専門としていたことから、その要素技術であるネットワークや画像処理をメインウェポンにして日々格闘中。
現在、勤務大学ではアスペルガー症候群の障害学生の修学支援として、ネットワークを使った遠隔講義を実施中です。
今後は、障害学生の認知数は増加すると見込まれるため、ICTを使った効果的な支援を模索中です。
コラムでは、ICTを使った発達障害の支援方法を中心に、その他の障害についても触れていく予定です。
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