第6回 メソッドとモチベーションの大切さ:AさんBさんのケース(2/3)

メソッドともう一つ、とても大事なのが、強化子(reinforcer)です。強化子とは、簡単に言えばモチベーションをあげるものです。Aさんの様に、作業をする事自体が好きな人もいますが、すぐにやる気がなくなる人もいます。

アーチストBさん(40代後半、知的障害)は、オシャレとショッピングも大好きなとてもかわいらしい女性ですが、少し甘えん坊で、インストラクターに制作を殆どやってもらっていました。 そして疲れたり、作業が難しすぎると、泣いたり自分のものを壊したりと、不適切な行動で訴えていました。

そこで私はまず、そうなるまえに休憩を申し出る事を彼女と取り決めました。 休息を与える事で不適切行為は減りました。それでもBさんには、できるときとそうでないときとの大きな気分のムラがありました。

彼女は普段、お姉さんに借りたアクセサリーを身につけてます。お金がないため、彼女はなかなか好きなものが買えません。

そこで私は、彼女が自分で作った作品の二つに一つを家に持ち帰る事を許可しました。最初は、小さい作品でこまめに強化を、より時間のかかるプロジェクトに移行(reinforcement scheduling)しました。

するとBさんは「早く持ち帰りたい!」と制作を頑張れるようになりました。 その後作品が売れ、お金がもらえるという事も理解できるようになってきたようです。

自分のものを自分で作る、自分の作品を作り、それを売った収入でショッピングをする。 これらが強化になり、Bさんは長時間集中して作業ができるようになりました。

現在スタジオには、Bさんが自分で作った作品が沢山並んでいます。

プロフィール

佐藤エリコ

カリフォルニアの首都、サクラメント在住の15歳のアスペ君の母。
東京造形大絵画科、サンフランシスコ州立大卒。
1999年渡米し、画家、イラストレーター、美術教師として活動する。
2007年、一人息子Mのアスペルガー診断をきっかけに自閉症の療育を学ぶため、ABA(応用行動分析)のホームセラピストに。
2010年、アスペルガー育児とセラピスト体験をコミックエッセイ「まさか!うちの子アスペルガー?」(合同出版)から出版。
現在はアートとセラピストの経験を活かして、2010に発達障害(知的障害、脳性マヒ、てんかん、自閉症を含む)をもつ成人のアートスタジオ「スタジオ23(仮名)」にインストラクターとして勤務している。
18歳から90歳以上までの強烈な個性のアーチスト達が50人以上も通うアトリエで、息子の将来について考えながら、日々格闘中!

ブログ・絵カードのお店

著書


まさか!
うちの子アスペルガー?
佐藤エリコ/著
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