第6回
メソッドとモチベーションの大切さ:AさんBさんのケース(1/3)
皆さん、今日は!
カリフォルニアは、今ホリデーシーズン(ハロウィン、サンクスギビング、クリスマスと行事の続く年末)まっさかりですが、日本の皆さんはどうお過ごしでしょうか?
知的障害のあるアーチスト達が彼らの持つ能力を最大に活かすためには、適切なメソッドを見つける事とモチベーションをあげる事がとても大事です。今回はAさんBさんの成功例をABA(応用行動分析)用語を用いてお話したいと思います。
私が数年担当しているAさん(50代)にはダウン症と重い知的障害があり、説明をなかなか理解できません。 私がウェアラブルアートを始めた当初は、スタジオには彼女の作品が殆ど見当たらず、前インストラクターは彼女に制作を殆どさせていないようでした。
私はまず布に線を引いて、縫い物の基礎から彼女に教える事にしました。 作業を細かいステップに分けて段階的に教えていく方法(task analysis)や、手に手をとる(physical)やってみせる(model)、材料の置き方で示す(position)、図などに合わせる(matching)などの様々な手助け(prompt)試みましたが、なかなか。
不器用なわけでもでも、視力が悪いわけでもないのに、少しでも布に汚れや傷があると線からそれてそちらへいってしまう。 試行錯誤の末たどり着いた方法は、無地の布に縫う場所にマーカーで点線を引き、Aさんに前からひたすら針を指していってもらうというものでした。 するともともと働き者の彼女は、これさえすれば何時間でも点に針を指し続けるという事が分かりました。
なんだそんなことか?と思われるかもしれませんが、これには試行錯誤がありました。 布の目が粗過ぎても細か過ぎてもダメ、点が大きすぎず小さすぎず、多過ぎず少なすぎず、最適なバランスを見つけるには大変時間がかかりました。 彼女が一針一針縫う動きのスピード、目線の先を観察、視界のどのくらいの範囲までよけいなものが入らなければスムーズにいくのかまでを見極めるのです。
10人程いるクラスでは、一日中彼女につきっきりではいられません。しかし、こうやって正しいメソッドを見つける事で、彼女が一人で作業出来る時間がグンと増えました。
もちろん、少しずつこういった手助けを減らし、彼女の制作の選択肢を広げる事が重要です。 例えば、少しずつ違う質感の布を導入して一般化(generalization)をしたり、マーカーの線を小さくして、手助けを減らしていったり(fading)します。
Aさんは、とても沢山の作品を制作する事ができるようになり、今ではスタジオのベストセラーの1人です。