第2回
発達障害を持つアーチストの支援とは?(2/2)

 年に数回行われるアートショウでは、様々な作品が一同に会します。
 そこには健常の人では見られないような色彩感覚で、独特の世界を描くN君(知的障害、写真参照)、ヒマさえあれば、幾何学的な模様と描き続けるXさん(自閉症っぽい、60代くらい)などの強烈な個性の作品があります。

 私は「自閉症の子はみな才能がある!」とは思いません。
 ただ特にアートの世界では、彼らのこだわりや特性が作品を強くする事が多いにあると思うのです。結果が全て。
 強い作品が生まれる理由が自閉症に見られる自己刺激(その行為で得られる感覚が心地よいのでする)行動なのか、はたまた、知的障害のある人の不器用さなのかはどうでもいいのです。作品が素晴らしいものになればよいのです。

 私が支援する事と言えば、環境の提供くらいです。
 例えば、彼らがもう絵の具が乗らないくらいにキャンバスを埋め尽くしたら、次のキャンバスを提供して促すかもしれません。本人がまだ続けたいと言うなら、その選択を尊重します。

 もちろん一人一人能力が違うので、個人のスキルに会わせてガイドもします。このためにはアセスメントがとても必要です。手伝い過ぎてもだめ、突き放し過ぎてもだめなんですよね。実はこのバランスが一番難しいのかも知れないなと思います。これについては毎日試行錯誤しています。

 障害があり、年もとってるが、お金もない。結婚もしてないし、子供もいない。それでもアートとのつきあい方を知る事で、家でも有意義な時間を過ごせるようになった人が沢山います。障害を持つ彼らには、様々な素材やインスピレーションに触れる機会が極端に少ないです。
 だから私は、アートを必要とする人に、アートという選択肢を与える仕事を続けていきたいと思うのです。

 少し長くなってしまいましたが、今回はこの辺で。

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プロフィール

佐藤エリコ

カリフォルニアの首都、サクラメント在住の15歳のアスペ君の母。
東京造形大絵画科、サンフランシスコ州立大卒。
1999年渡米し、画家、イラストレーター、美術教師として活動する。
2007年、一人息子Mのアスペルガー診断をきっかけに自閉症の療育を学ぶため、ABA(応用行動分析)のホームセラピストに。
2010年、アスペルガー育児とセラピスト体験をコミックエッセイ「まさか!うちの子アスペルガー?」(合同出版)から出版。
現在はアートとセラピストの経験を活かして、2010に発達障害(知的障害、脳性マヒ、てんかん、自閉症を含む)をもつ成人のアートスタジオ「スタジオ23(仮名)」にインストラクターとして勤務している。
18歳から90歳以上までの強烈な個性のアーチスト達が50人以上も通うアトリエで、息子の将来について考えながら、日々格闘中!

ブログ・絵カードのお店

著書


まさか!
うちの子アスペルガー?
佐藤エリコ/著
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