第6回 「頼む」のって難しいんだろうなぁ〜(3)
  支援者は気軽に「何でも頼めば良いよ」言うけれど… (2/2)

  実はここに彼ら当事者と向き合う時、私たちの価値観が邪魔をし、彼らが頼んでもそれを聞き取れない私たちがいる事に気づかされます。
 エレベーターで最上階に上がる彼は、その行動によって私に最上階に停める事を頼んでいたのだろうと思います。でも、車を駐車場に停める時は、出口に近いところとか、ビルの出入りに都合の良いところを探して停めるという私の価値観が邪魔をし、「最上階に停めて欲しい」という彼の頼みごとを聞けなかったのだろうと思います。
 気付いてみれば、毎回どこが空いているか解らない駐車スペース。最上階ならいつも空いている事を発見した彼は、最上階(一番不便で満車の時以外停まっていない)を選択すれば安心とした彼の想いがそこにあると想像します。

とは言っても、そこに気づくのに3年はゆうにかかりました。なぜなら満車になる事ってめったにない駐車場だったからです。  否、満車になっても気づかなかったかも。  でも彼のそんな想いになぜ気づけたかと我が身を振り返れば、3年間繰り返される彼の行動を「いつもの事」とか「障害ゆえのこだわり」にせず、「なぜ彼はそのような行動をするのだろか?」という疑問を常に持ち続けていた私がいるからだと思うのです。

 彼らがとる行動が、専門家の見地から見てどうかは私にはわかりません。
 でも、彼らの行動の一つ一つには常に何らかの意味がある。その意味はもしかしたら私たちに声掛けしているかもしれない。彼らの表現方法は私たちとは違い、又彼らの価値観は私たちと違うと常々理解しているつもりでも、それが何なのかが解らず、申し訳ないかな私は私の表現方法や価値観で彼らを判断しているのだと思いました。
 そう想い描いてみると、彼らの価値観を探るよりも私自身が持つ価値観がどのようなものなのかを意識する事で、より彼らに近づけるのではないかと思うのです。

 支援者という立場で「頼まれる」事は多いけれど、もしかしたらその半分も聞けていないのではないかと日々反省しています。

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プロフィール

岩ちゃん
(「岩ちゃん」さんとは言わないでね)

年齢:1963年 大阪産
現在:東京都在住
仕事:たこの木クラブ代表

たこの木クラブって何?

東京の端っこの方で活動しているちっちゃな市民団体です。1987年に誕生しました。

「地域でともに生きる」事をめざし、発足当初は「子ども達どうしの関係づくり」をテーマに、出会いの場としての子ども会や子ども達の日常である学校にこだわり活動してきました。
2000年あたりからは、障がい故に取り残されていく子ども達(青年たち)の課題として、進学・就労・自立生活といった様々な場面での支援を担っています。

「支援者」と言えば聞こえは良いのですが、「知的」とか「発達」といった障害名や専門性に疎く、長年付き合ってきた子ども達のほとんどが実は「自閉症」という領域にいる人たちである事を最近になって知ったほどです。
又、重度と呼ばれる人たちが多いため「自閉症」という人は皆、療育手帳が取れるものと思っていたまったくのど素人です。
でも、専門的な事はまったくわかりませんが、目の前にいる人たちと向き合い、今そして将来に渡り「誰もが地域で暮らし続ける」ために必要となる課題を日々悶々と模索しつつける事には変な自信を持っている私です。

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