第5回 「頼む」のって難しいんだろうなぁ〜(2)
  支援者は気軽に「何でも頼めば良いよ」言うけれど… (2/2)

 もしかしたら、これまでも「頼む」と言うことに彼は挑戦していたのかもしれませんが、その「頼み事」が相手に理解されず、結果自分の想いとは違う対応をされたこともあったかもしれません。
 そんな中彼が見出した「自分でできる事を人に頼む」と言うのは、頼んだ結果を彼自身が解っているという事になります。予期せぬ対応をされたらすぐに解るという事。もしかしたら、自分の頼み事を「相手はどのように受けるか?」と相手を査定をしているのかもしれない。そんなことを思い描きました。
 落ち着いたと言う点では、彼の描いた結果どおりに私が対応したと言うことだし、査定と言う点においても、静かになったことで私は合格?

 「この人には頼んで良い」と思ってもらえたのかもしれません。
 もし私が「何でそんなことをさせるの?」などと彼に対応していたら・・・
 たぶん彼はその後私に対し「頼む」ということはしないかもしれません。
 「そんなこと自分でやりなさい」と言ったら・・・
 たぶん彼は、その後何でも自分でやるでしょうが、自分ではできない事やちょっと人に頼めばスムーズに行くことも自分(だけ)でやり、非常に困ったり、イライラしたりして、暮らし全体に影響を与えたかもしれません。
 子育てをしていると「自分でできることは自分でやりなさい」と親としてはつい言ってしまいます。それが本人のためと無意識に思っているのが私たちがいます。
 でも、「頼む」と言う行為は、相手が存在することなので実は非常に難しいことだと思います。
 「自分でやりなさい」と言われ続けてきた当事者の皆さんが、「人に頼む」ということを実現するには、「頼めるようになる」ではなく私たちの方が「頼み事を受け止める」能力を意識し身につけていくことが必要で大切なことだと思いました。

過去の記事

プロフィール

岩ちゃん
(「岩ちゃん」さんとは言わないでね)

年齢:1963年 大阪産
現在:東京都在住
仕事:たこの木クラブ代表

たこの木クラブって何?

東京の端っこの方で活動しているちっちゃな市民団体です。1987年に誕生しました。

「地域でともに生きる」事をめざし、発足当初は「子ども達どうしの関係づくり」をテーマに、出会いの場としての子ども会や子ども達の日常である学校にこだわり活動してきました。
2000年あたりからは、障がい故に取り残されていく子ども達(青年たち)の課題として、進学・就労・自立生活といった様々な場面での支援を担っています。

「支援者」と言えば聞こえは良いのですが、「知的」とか「発達」といった障害名や専門性に疎く、長年付き合ってきた子ども達のほとんどが実は「自閉症」という領域にいる人たちである事を最近になって知ったほどです。
又、重度と呼ばれる人たちが多いため「自閉症」という人は皆、療育手帳が取れるものと思っていたまったくのど素人です。
でも、専門的な事はまったくわかりませんが、目の前にいる人たちと向き合い、今そして将来に渡り「誰もが地域で暮らし続ける」ために必要となる課題を日々悶々と模索しつつける事には変な自信を持っている私です。

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知的障害/自閉の人たちの自立生活と支援
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