最終回 虹色のたまご(1/2)

今は心身ともにどっしり図太くなっちゃったので、あまり信じてもらえないのだけど、10年前のわたしは、「ふつう」の呪縛にとらわれた弱っちい母だった。家では「天真爛漫でかわいい」まぼが、保育園では「泣いたり投げたりの困ったちゃん」になってしまう現実が、悲しくてくやしくて。家族となら落ち着いていられるんだもの、周囲の対応が良くなればきっとなじめる、困ったちゃんが目立たなくなればもっと「ふつう」でいられると、もどかしい思いでいっぱいだった。たんたんが自閉症とわかったときには、それまでの不可思議行動の謎が解けて、霧が晴れたようにスッキリしたのにね。我ながら勝手だなあと思う。みんなといっしょにやれそうでやれない、やれないと思ったらやれる、あと一歩のところでグラグラしているまぼの様子を見るたびに、わたしの心もグラグラ揺れた。 専門医に診てもらおうと思ったのは、的確なアドバイスを受ければ、良いほうに変わっていけると期待したから。まずは成育歴や困りごとを聞かれるだろうと、準備万端で臨んだ初診時、主治医の第一声は予想外のものだった。

「じゃあ今からまぼくんの良いところを、できるだけたくさん教えてくれる?」

へ?まぼの良いところ?えーと、元気……というよりやんちゃすぎだし、好奇心旺盛……というより猪突猛進だし、いい子なんだけどここがちょっと心配で、ここがちょっと困っていて……。

「ストップ、ストップ!もう愚痴になってる。私は良いところを教えてって言ったのよ」

一瞬、時間が止まったかと思うくらいハッとした。いつの間に、こんなに良いところに目を向けられなくなっていたんだろう。外でうまくいかないのは、外のせいだと思っていたけど、まぼは家の中でも認めてもらえず不安だったんだね。家でも外でも気を張っていたら、大人だってつぶれちゃうもんね。

 カチコチだった母の心がほぐれていくのと同時に、まぼの足元も少しずつ安定したものになっていった。その頃作ってくれたまぼの「虹色の楽譜」がこれ。発想がステキでしょ?(笑)

さらにわが家の玄関には虹色レストランの看板まで設置され、虹色ブームがやってきた。このユニークさが、まぼの「良いところ」なんだよね〜。

プロフィール

じゅん

色とりどりな中2の3つ子と家族5人で、愛知県に生息中。
アスペッ子なまぼ、天然なあーちゃん、重度の知的障害&コテコテの自閉症のたんたんとともに、笑ったり、ずっこけたり、たまにへこんだりしながら、マイペースに暮らしてます♪

ブログ
著書

発達障害のある子の
こころを育てる
じゅん/著
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