第5回 意地悪に気づけない (1/2)

たしか小学校3年生のときだったと思う。
「お母さん、わたし、もうガマンできないんだけど!」
あーちゃんがめずらしくプリプリしながら帰ってきた。

「何かあったの?」
「わたしじゃなくて、まぼくんだよ!まぼくん、○○くんたちに土下座しろって言われて、すぐ土下座しちゃうんだよ!○○くんたちは笑ってるし、めっちゃ腹立つんだって!」

聞いてびっくり。あーちゃんの口から聞くまでぜんぜん知らなかった。まぼは学校であったことをペラペラしゃべるタイプではないけれど、嫌なことがあると食欲が落ちたり、気分が落ちて元気がなくなったり、もっとひどいと中耳炎になったり、心が体に出るタイプ。だから今までも学校で何か起こると、なんとなく異変に気づくことができていたのに、今回はそんな気配はまったくなかった。小学校中学年ともなると、ここまで感情を隠すようになっちゃうのかしら?

が、まぼと話してみて、わからなかった理由がわかった。

「ん?だって土下座すれば済むことじゃん?叩かれたり、悪口言われたり、嫌なことはされてないよ?」

そう、嫌なことをされているという意識がゼロだったのだ・・・(涙)無症状なわけだ。

あーちゃんがそんなことやめなよと言うと、「だってやらないと蹴られるもん。土下座しちゃえば蹴られないもん。」とケロッとしていたらしい。これだけ聞くと、こんなふうにいつも無抵抗なの?と思われるかもしれないけれど、実は自分を否定される「言葉」には敏感で、聞き流せずに涙ぐんだり、トラブルになることもあった。授業中に手を挙げて間違えた時、隣の子がクスッと笑ったというだけで、ひどく傷ついて泣いたこともあった。男の子たちがじゃれ合いのなかで、「バカじゃねーの?」と口走るのも許せなくて、言い合いになってしまったりもした。なのに土下座は許せちゃうって・・・。

「土下座ってね、『全部わたしが悪いんです、本当に申し訳ありません、ゆるしてください』っていう、最大限の謝罪の姿勢なの。まぼは○○くんたちに、何かひどいことしたの?」
「してない」
「何も悪いことしてないのに、お母さんがいきなり『謝りなさい』って言ったらどう?」
「悪いことしてないのに謝るのは嫌だ。」
「でしょ?『土下座しろ』=『オレの命令だから悪くなくても謝れ』ってことなんだよ。そんなのヘンじゃない?」

プロフィール

じゅん

色とりどりな中2の3つ子と家族5人で、愛知県に生息中。
アスペッ子なまぼ、天然なあーちゃん、重度の知的障害&コテコテの自閉症のたんたんとともに、笑ったり、ずっこけたり、たまにへこんだりしながら、マイペースに暮らしてます♪

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著書

発達障害のある子の
こころを育てる
じゅん/著
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